死亡事故の知らせは、ある日、突然やって来るものでしょうし、幸いのご家族を失ったことの悲しみや衝撃から、加害者側との交渉について、どのように進めて行けばよいのか、何から手を付けていけば良いのか、判断できないのが通常だと思います。
そのため、これかどのように進めて行けばよいのか等、見当が付かない場合や不安がおありの場合は、取りあえず、被害者側の交通事故の事件処理に精通している弁護士にご相談されることをお勧め致します。
以下では、死亡事故発生から、事件解決までの大まかな流れと保険会社対応についてご説明させていただきます。
このページの目次
事故の発生、事故状況、加害者の確認
事故発生状況の確認、及び加害者の情報の入手
一般的に、事故の発生状況を調査、確認する管轄警察署の交通事故捜査担当者から、事故状況の説明を受け、加害者の情報(氏名、住所、連絡先電話番号)を確認します。
携行品リストの作成、写真撮影
この時、出来れば、事故のために、壊れたり痛んでしまった携行品の写真撮影とリスト作成を行っておくと後日、役立つと思われます。
自動車、バイクの修理、廃車手続き
また、被害者の方が、自動車やバイクに乗っておられましたら、警察の調査が完了すると、最寄り自動車ディーラーや修理工場に運搬し、修理の見積り等を行ってもらいます。
損傷が激しく修理が出来ない場合や全損扱いとなる場合は、廃車手続きを検討することになります。
ここで、もし事故態様について、争いが有る、ないし争いの発生することが予想される場合は、自動車、又はバイクの衝突箇所の写真(損傷状況、位置、地面からの高さ)を保管しておきたいところです。
ドライブレコーダー、及び防犯カメラの映像の確認、収集について
事故発生状況について、双方に争いが有ったり、理解できないことが有る場合は、双方の車両のドライブレコーダーの映像の確認、事故発生現場付近の防犯カメラの映像確認を行い、出来れば、後日の示談交渉に備えて、動画を入手、保存しておきたいところです。
特に防犯カメラの映像データは、それぞれの管理者によっては、すぐに上書きされていき、後日、確認できなくなることがあるので注意が必要です。
保険会社、及び担当者の確認
加害者の保険会社名、担当者名、連絡先などを確認しておきます。
また、被害者様のご利用可能な弁護士費用補償特約や人身傷害補償特約等、ご利用可能な自動車保険を確認するため、念のため、被害者様自身、またはそのご家族がご契約されている自動車保険会社に事故の発生をご連絡しておく方が無難です。
弁護士へのご相談、ご依頼
法律相談
交通事故の被害に遭うことは、一生に一度有るかないかと言っても過言ではありませんし、突然の出来事のために、何から手を付けて行けばよいのか見当が付かないことが通常だと思われます。
昨今は、インターネットの情報網が発達しており、また、交通事故処理のノウハウを記載した書籍も多数販売されております。
しかしながら、交通事故の被害者やそのご家族が、発生した交通事故の内容を適切に把握して、必要な資料を漏らすことなく集めて、加害者側の保険会社と十分な交渉を行い、より適切な解決にたどり着くのは、率直に申し上げて容易な事ではありません。
そのため、一度は、被害者側の交通事故の事件処理に精通し、経験の豊富な弁護士へのご相談をお勧め致します。
相談の時期は、なるべく早い時期が望ましいと考えます。また、相談の際に必要となる資料につきましては、相談先の法律事務所にご確認いただければと思いますが、法律相談の初期は、それほど多くの資料はご準備いただく必要ないと思われます。
基本的には、ご相談先、ないしご依頼先の弁護士と打合せをしながら、必要な書類を収集していくこととなります。
もっとも、上記のとおり、防犯カメラ映像など、後日、収集が困難になるものもありますので、注意が必要です。
ご契約書の作成
弁護士に事件処理をご依頼される場合は、弁護士費用やその計算方法等を明記した契約書の作成が必要とされています。
ご依頼時に、契約書の作成を行うこと無く、委任状への署名、捺印だけを求めてくる法律事務所は、おそらく無いと思われますが、仮にそのようなことがあった場合は、弁護士からご納得できるご説明が無い限り、事件処理のご依頼を見送った方が無難だと思われます。
また、事件処理の見通し(良い結果、悪い結果の両方)や弁護士費用の計算方法はしっかりとご確認いただければと思います。
示談交渉(自賠責保険会社への被害者請求手続き)
ご依頼された弁護士に、必要な書類を提出し、当該弁護士の方で、賠償額の計算を行い、加害者側の自動車保険会社と示談交渉を進めて行きます。
この時、被害者の方の過失割合等を検討し、場合によっては、加害者側の自賠責保険へ被害者請求手続きを行う場合も考えられます。
そして、加害者側の自動車保険会社から、提示された賠償額の回答に問題が無ければ、示談交渉は成立となります。
他方、賠償額が低すぎる等、問題が考えられる場合は、訴訟(裁判)への移行を検討することとなります。
なお、被害者の方のご親族にて、弁護士にご依頼されなくても、加害者側の自動車保険会社から、賠償額の提示はなされると思いますし、その提示された内容をご納得出来れば示談は成立することとなります。
もっとも、加害者側の自動車保険会社からは、通常、自動車保険会社独自の基準での賠償額の回答となっていることが多く、弁護士が交渉したケースの方が、より高額な賠償金(示談金)を獲得できることも考えられます。
そのため、加害者側の自動車保険会社から、賠償額の提示が有った段階で、一度は、被害者側の交通事故処理に精通した弁護士に、呈示された内容が適切かどうかをご相談されることをお勧めします。
ご注意
示談が成立した場合は、基本的に示談をし直すということが出来ません。
そのため、示談が成立した後で、示談内容よりも、もっと高額な賠償金を受領出来る可能性のあることが後日判明しても、示談をし直すということは出来ないのでご注意が必要です。
訴訟での解決
示談交渉において、加害者の保険会社から満足のできる回答が得られない場合は、訴訟での解決を目指します。
訴訟に移行した場合は、相手方が事故態様を争ってきていても、被害者側の立証活動が成功すれば、裁判所は、満足の出来る判決を言い渡してくれ、また、満足の出来る和解での解決も可能です。
その他、訴訟での解決の場合、事故発生日から賠償金支払い日までの遅延損害金や損害額の1割相当額の弁護士費用が加算されますので(和解の場合は、これらを勘案した解決金、調整金が加算されます)、示談交渉よりも受領出来る賠償金が増える傾向にあります。
もっとも、訴訟移行の場合、解決までの時間が長期化するのが通常で、例えば、第一審が地方裁判所の場合、比較的早く終了できても、1年程度は時間が必要となり、事故態様や損害の内容について大きな争いがあり、控訴審まで移行する場合では、2~3年ほどの期間が必要となるようなケースもあります。
また、訴訟に移行したら、獲得できる賠償金が必ず増えるというものではなく、示談交渉時に、加害者の保険会社から、良い条件で示談金が提示されている場合は、訴訟に移行したものの判決で得られた賠償金はほとんど示談金と異ならないケースや、場合によっては少なるケースも考えられますので、慎重な検討が必要となります。
その他の手続きについて
加害者の保険会社に対する示談交渉以外には、下記の保険制度や年金などのへの請求手続きを検討していただくこととなります。
- 労災保険への請求
- 厚生年金、共済など年金への請求
- 生命保険への請求