死亡事故の慰謝料等損害賠償額について

慰謝料とは、交通事故によって被害者が死亡したことによって被る被害者の方ご本人の精神的苦痛、または被害者のご親族の受けた精神的苦痛を慰藉するための賠償金のことをいいます。

大切なご家族が、交通事故で死亡された場合、被害者の方自身は当然、そのご家族の精神的苦痛は、言葉で言い表せない程のものと思われますので、この精神的苦痛を慰藉するための賠償金は当然高額になり、また、賠償金を受け取ったからと言って精神的苦痛が確実に慰藉される保証もありません。

そのため、慰謝料額をいくらにするかは、難しい問題と評価出来ますが、損害賠償実務上、裁判所は、公平を図るために、慰謝料額の基準を定めています。

また、加害者の自賠責保険や任意保険においても、被害者が死亡した場合の慰謝料額について、一定の支払基準が定められているものの、裁判基準に達しない慰謝料が支払われる場合がありますので、注意が必要です。

①自賠責保険基準について

自動車保険には、

  1. 自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)
  2. 任意保険

の二種類の保険がありますが、自賠責保険は、自動車の運行によって、人の生命、身体が害された場合においての損害の賠償を保障するために制度化された保険です。

そのため、①自賠責保険は、②任意保険よりも、被害者保護の見地から、原則的に過失相殺がなされず、また、被害者からの自賠責保険への直接、保険金の支払い請求が出来、車両毎に契約が義務付けられている強制保険である等の点で、任意保険と異なります。

一般的に、交通事故の被害者に対しては、②任意保険会社の担当者が、加害者の示談代行を担当し、任意保険会社が、治療費の全額を支払い、後日過失割合に応じて、治療費の清算を行う“一括対応”が多いため、被害者が、この①自賠責保険へ直接請求を行うケースは、後遺障害が残存したようなケース以外は少ないと思われます。

もっとも、①自賠責保険は、人身事故の損害賠償について最低限の保障を担っており、そのため、一括対応を行った②任意保険会社は、被害者に支払った治療費、休業損害金等の保険金について、①自賠責保険に対して、求償を行います。そのような関係から、①自賠責保険は、被害者の人身損害についての第1次的な保険と表現されることもあります。

このように、①自賠責保険は、被害者保護の見地から設けられた保険制度であり、また、支払われる死亡事故の慰謝料等はその支払い基準が、次のとおり、定められていますが、裁判所が定める慰謝料額から勘案すると、かなり低額になっています。

被害者本人の慰謝料 金400万円
遺族の慰謝料

請求出来る遺族は、被害者の父母、配偶者、子の範囲。

  1. 請求権者1人の場合、550万円
  2. 請求権者2人の場合、650万円
  3. 請求権者3人以上の場合、750万円
  4. 被害者に扶養者がいる場合、200万円を加算。

②任意保険基準について

②任意保険は、①自賠責保険で保障されない範囲の損害の賠償を担っており、また、物的損害の賠償も認められ、近年は、人身傷害補償特約や多様な保険サービスが付加されています。

もっとも、被害者のご遺族が、任意保険会社に対して、交渉を行った場合に、任意保険から支払われる死亡事故の慰謝料額は、任意保険会社独自の算定基準となっているか、自賠責保険の基準と同等である場合のいずれかであり、そのどちらも、後述の裁判基準よりも低額なっているケースがほとんどと考えられます。

そのため、死亡事故に限ったことではありませんが、被害者の方のご遺族が、弁護士にご依頼されること無く、任意保険会社と示談交渉を行った場合、弁護士が代理人として、交渉をした場合よりも、相当低額となっているケースが大半だと思われますので、注意が必要です。

任意保険会社の担当者が、とても親切な方だったとしても、任意保険会社自身が営利を追求する株式会社であり、また、現在の日本の損害賠償実務の制度がそのような運用となっていることから、任意保険会社からの提示額をそのまま了承せず、是非、交通事故処理に精通した弁護士に一度ご相談されることをお勧め致します。

裁判基準(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準〔赤い本基準〕)について

以下の慰謝料額が基準とされており、それぞれの事案の事情(事故態様、過失の内容・程度、被害者の被った損害、年齢、職業、家族関係など)が斟酌され、慰謝料額が増減される運用となっています。

  1. 一家の支柱(経済的に家族の生活を支えている者) 2800万円
  2. 母親、配偶者 2500万円
  3. 独身の男女、子供、幼児等 2000~2500万円
  4. 近親者(妻、子供、両親など)の慰謝料 100~300万円

まとめ

弁護士が被害者の代理人として、加害者側の任意保険会社と示談交渉に当たる場合、上記の裁判基準を提示することになります。

示談交渉過程においては、必ず裁判基準での慰謝料で、加害者側と示談できるものではありませんが、示談成立時の慰謝料額は、上記の自賠責保険基準、または任意保険会社の支払基準よりも高額になるケースがほとんどだと思われます。

適切な損害賠償請求のためには、その他にも、請求可能な損害費目(被害者の治療費、入院費用、死亡による逸失利益(将来の収入喪失に関するの損害)、ご家族の交通費・休業損害金、慰謝料)の抽出と計算が必要となってきますので、被害者側交通事故事件の処理に精通した弁護士へ事件処理をご依頼されるか、少なくとも、示談前のご相談をお勧め致します。

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