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後遺障害と後遺障害診断(症状固定)について
交通事故で受傷された場合、通常、医療機関において、そのお怪我の状態を診察してもらい、医師に必要な治療を行ってもらいます。
もっとも、お怪我の内容によっては、一定の治療を継続しても、残念ながら、事故前の状態にまで治らない場合があります。
損害賠償の実務においては、そのようなお怪我が完全に直らず、治療の効果が見込めなくなった状態を、後遺障害が残ったものとして取扱い、被害者の方は、残存した後遺障害の内容・程度に応じて、加害者に対して、後遺障害の慰謝料と労働能力低下分に相当する損害(逸失利益)の賠償請求を行うこととなります。
そして、主治医に、どのような後遺障害が残存しているかを診断してもらうことを“後遺障害診断”と呼び、また、後遺障害診断を行う時期(積極な治療を終了させる時期)について、“症状固定をする”と呼んだりします。
後遺障害診断書の作成について
前述のとおり、治療を継続したものの、残念ながら、“痛みや痺れが残ったままほとんど変化が無い”、“関節の動きが悪くなったままの状態で完全に動かない”というような場合、一般的には、主治医の判断によって、症状固定となります。
この時、交通事故で受傷されたケースで、例えば、加害者に対して、損害賠償金を請求される場合は、治療先の医療機関や主治医に対して、後遺障害診断書の作成を依頼することが必要となります。
後遺障害等級認定について
前述のとおり、治療を継続したものの、完全に治らず、残念ながら、後遺障害が残存してしまった場合、治療先の医療機関などで、後遺障害診断書を作成してもらいます。
次に、この後遺障害診断書の記載内容を前提として、適切な損害の賠償を受けるために、自賠責保険において、それぞれの後遺障害について、等級の評価を受けます。
具体的には、自動車保険(自賠責保険)では、後遺障害診断書に記載のある全ての後遺障害が、保険金(賠償金)請求の対象となるのではなく、労災保険で定められている後遺障害の等級認定の条件を充たすかどうかによって、評価がされます。
例えば、お顔の傷跡が、3センチメートル以上の長さの傷跡であれば、後遺障害等級12級が認定されること取り決めとなっているのですが、3センチメートル以上の長さであった場合は、後遺障害等級12級が認定され、被害者請求手続きでは、自賠責保険から、後遺障害等級12級部分の保険金として、224万円が支払われます。また、その後、この後遺障害等級12級を前提として、加害者の保険会社に対して、賠償請求を進めて行くことになります。
他方、お顔の傷跡が、外貌醜状の後遺障害等級12級の認定基準3センチメートルを充たさなかった場合は、後遺障害等級は非該当という判断がされることとなり、自賠責保険からは、このお顔の傷跡について、後遺障害部分の保険金は残念ながら、支払われないこととなります。
このような意味から、被害者の方に残存した後遺障害が、自賠責保険において、どのような等級認定を受けるのかは、その後の加害者に対する賠償請求を行う上で、また、被害者の方自身の人身傷害補償特約保険金に対する保険金請求との関係でも非常に重要であると考えることが出来ます。
後遺障害等級認定の手続き(認定方法)について
後遺障害等級の認定方法(「事前認定」と「被害者請求」)
後遺障害の認定は、損害賠償請求を行う上でとても重要な手続きと位置付けられますが、被害者の方は、後遺障害診断書等必要書類を、自賠責保険会社に提出し、後遺障害の認定結果を待ちます。
この後遺障害診断書等必要書類を自賠責保険会社に提出する方法には、以下のとおり、
- 「事前認定」:
加害者の任意保険会社経由で、自賠責保険会社に提出する方法。 - 「被害者請求」:
被害者が直接、加害者の自賠責保険事務所に提出する方法。
の二つがあります。
「事前認定」・「被害者請求」どちらが良い?
この二つの手続きのどちらを選択すべきかという点については、①「事前認定」の場合、必要書類の収集を加害者の任意保険会社で行ってくれるという点で、被害者の方の手間が省け、労力の点で楽であるというメリットが挙げられるかと思います。
もっとも、任意保険会社は、被害者の方に、より重い後遺障害が認定された場合、これに応じて、より高額な保険金を支払わなければならない立場にある関係で、被害者の立場に寄って立ち、被害者の受傷状態や後遺障害の残存状態を親身に調査してくれたり、その内容を治療期間中の診断書、症状固定後の後遺障害診断書に記載されるよう十分配慮して必要な書類を揃えてくれるような事は、ほとんど期待できないと考えます。
そのような理由から、被害者の方自身が、主体的に自分自身の受傷状態を把握した上で、漏れの無い後遺障害診断書が作成されるよう配慮して、後遺障害等級認定手続きに必要な書類を揃え、場合によっては、被害者自身が、自賠責保険会社に対して、後遺障害等級認定に関しての直接意見を述べることの出来る、②被害者請求が望ましいと考えます。
また、②被害者請求の場合、自賠責保険会社にて、後遺障害等級が認定されれば、認定された等級ごとに定められている、後遺障害部分の保険金がお支払いされますので、症状固定後の生活資金が得られるというメリットがあります。