保険会社と示談するときの心得

交通事故の被害者の方は、事故により壊れた車両や衣類、携行品などについての“物的損害”、また、お怪我をされたことについての“人身損害”に関して、加害者の保険会社と示談交渉が必要となります。

お怪我をされている場合は、通常、物的損害について示談交渉が先行し、お怪我が治る、または症状固定となった(後遺障害診断を受けた)後に、人身損害についての示談交渉が始まると思います。

以下、物的損害、人的損害に関する示談交渉に際しての心構えを述べたいと思いますが、一般的に損害額の大きくなる人的損害についての示談交渉は特に注意が必要となります。

また、人的損害の示談交渉については、事前の準備が非常に重要となってきますので、この点をぜひ理解していただければと思います。

加害者の保険会社の立場を知る

加害者の保険会社は、加害者に代わって、物的損害、人的損害について、賠償してくれますが、あくまでも営利を追求する企業ですので、被害者の方にとって適切、十分な賠償額(示談案)を提示してくれないことが良くあります(ほとんどです、と言っても言い過ぎでは無いかもしれません。)。

実際に、過去、私が相談を受けた示談案に関して、弁護士が介入する実益が無いと思われる示談案を見たことがありません。

反対に、後遺障害が残存しているのが明らかなのにもかかわらず、被害者の方が知識や経験が無いことを良いことに、非常に低い金額の示談を提示しているような不適切と思われる事案も散見されています。

そのため、加害者の保険会社と示談する場合や示談案を受け取った場合、是非、弁護士にご相談されることをお勧め致します。

人的損害について

通常、物的損害の交渉が、人的損害の交渉に先行しますが、特に人的損害について問題のあるケースが散見されるため、こちらから説明させていただきます。

注意すべきポイントは主として以下のとおりです。

  1. 請求可能な損害費目に欠落がないかどうか。
  2. 後遺症が残存しているケースは、漏らすこと無く、適切に後遺障害等級が認定されていること
    →★この部分に問題のあるケースがとても多いので、特に注意が必要です。その理由は、適切な後遺障害診断書が作成されていないことが多いためです(加害者の保険会社は、後遺障害診断書が適切に作成されてないとアドバイスしてくれることは、ほぼ無いと考えてもらって良いと思います。)。
  3. 逸失利益を算定する上、基礎収入額、労働能力喪失期間、喪失率が適切であること
    →30歳未満の方、主婦の方、高齢者の方は注意が必要です。
  4. 適切な慰謝料額が認定されていること
    →★弁護士が交渉する場合の慰謝料額は裁判基準、被害者の方自身が交渉される場合の慰謝料額は、金額が低めの自賠責保険基準ないし保険会社基準となっていますので、注意が必要です。
  5. 適切な休業損害額が認定されていること
    →特に、パートなどをされている兼業主婦の方は注意が必要です。
  6. 適切な過失割合になっていること
    →過失割合の判断は、主に“民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準”(別冊判例タイムズ38)にもとづき行いますが、弁護士にご相談される方が無難です。また、実況見分調書などの捜査記録は入手をしておきたいところですが、これも、事件処理をご依頼される弁護士の方で入手することが多いと思われます。

物的損害について

物的損害は、大きく分けて、車両の修理が可能な分損と、車両の時価より、修理代金の方が高くなってしまうため、車両の時価相当額を賠償する全損があります。

  1. 分損の場合
    修理代金が賠償額の中心になるため、問題のあるケースはそれほどなく、加害者の保険会社が代車費用を負担してくれないというようなケースがあります。
  2. 全損の場合
    車両の時価の捉え方に問題があり、賠償額が低くなっているケースがあります。
    また、全損の場合、買い換え費用を請求することが可能ですが、この費用がすっかり落ちてしまっているケースがあるので、注意が必要です。
  3. 衣類、携行品について
    破れてしまった、壊れた以外に、キズが付いた、汚れた等でも賠償の対象となります。購入した際の領収証等が残っていれば理想的なのですが、通常は、残されていないでしょうから、痛んでしまった衣類、携行品の写真等を相手方に提出して、査定をしてもらうことになります。


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