後遺障害の逸失利益について

逸失利益について

逸失利益とは、被害者の方が、後遺障害(後遺症)が残存したことによって、労働能力が低下し、将来の収入が減少したことについて損害を意味し、以下の計算式によって、計算する運用となっています。また、死亡事故の場合も、同様に逸失利益の損害を計算することになります。

基礎収入額×労働能力喪失率×労働喪失期間(就労年数、※ライプニッツ係数)

基礎収入額について

原則的に事故前年度の年収を基準とします。

労働能力喪失率について

原則的に労災基準に定められている下記の数値を用います。

労働喪失期間(就労年数)

症状固定時の年齢から67歳までの年数、ないし症状固定時の年齢の平均余命の2分の1の年数のいずれか長い方の年数を用います。

もっとも、将来の賠償金を受領する関係から、上記の年数に対応する、将来の利息(中間利息)を勘案した数値(ライプニッツ係数)を用います。

★上記の計算内容は、原則的な考え方を示しています。被害者の方の事情によって、計算内容が異なってきますので、交通事故処理に精通した弁護士にご確認していただくことをお勧め致します。

【労災基準における労働能力喪失率】

別表第1
第1級、2級 100%
別表第2
第1~3級 100%
第4級 92%
第5級 79%
第6級 67%
第7級 56%
第8級 45%
第9級 35%
第10級 27%
第11級 20%
第12級 14%
第13級 9%
第14級 5%

基礎収入額について

前述のとおり、原則的に事故前年度の年収を基準とします。

もっとも、以下の属性の方の場合は、損害賠償実務上、以下の取り扱いとなっています。

学生・生徒・幼児等の無職の方

  • 原則的に平均賃金(男女別全年齢平均賃金)を基礎収入額とします。
  • 大学卒業を前提としている場合は、大学卒業の平均賃金を用います。
  • 女子年少者の方の場合は、損害賠償実務上、男女を含む全労働者の全年齢平均賃金を用いるのが一般的です。

家事従事者の方

  • 女性労働者の全年齢平均賃金を基礎収入額とします。
  • アルバイト、パートなどのお仕事をされている場合は、これらの実収入額と女性労働者の全年齢平均賃金とを比較して、高くなる金額を基礎収入額とする取り扱いとなっています。

高齢者の方

原則的に事故前年度の年収を基準としますが、お仕事をされていない場合も、就労の蓋然性(就職活動を行っていたなど)が認められれば、男女年齢別の平均賃金を基礎収入額とします。

失業者(生活保護費受給中)の方

就労の蓋然性(就職活動を行っていたなど)が認められれば、男女年齢別の平均賃金を基礎収入額とします。

労働能力喪失率について

前述のとおり、原則的に労災基準において、後遺障害等級ごとに規定された数値を用いることとなります。

例外的に、就労への後遺障害の影響が大きい事情がある場合は、その事情を立証することにより、上記の労災基準よりも高い喪失率で逸失利益を算定するケースもあります。

労働喪失期間(就労可能年数)

基本的な考え方について

前述のとおり、症状固定時の年齢から67歳までの年数、ないし症状固定時の年齢の平均余命の2分の1の年数のいずれか長い方の年数を用います。

また、未就労者の方の場合は、原則として18歳から67歳までの年数となりますが、大学卒業を前提とする場合は大学卒業時の年齢から67歳までの年数を就労年数とします。

むち打ち症(頚椎捻挫、腰椎捻挫)の場合について

例外的に、損害賠償実務上、むち打ち症の場合は、後遺障害等級12級が認定されたむち打ち症で10年程度、14級が認定されたむち打ち症で5年程度に制限される取り扱いとなっています。

★なお、加害者の保険会社側から、“むち打ち症(頚椎捻挫、腰椎捻挫)”以外の、その他の局部の神経症状の後遺障害(例えば骨折後の痺れや痛みなどの後遺障害)についても、むち打ち症と同様の労働喪失期間が示されることが有りますが、正しい理解では無いと考えます。

これに対しては、アの考え方に基づいての逸失利益の算定をご主張されるべきだと考えます。

まとめ

後遺障害逸失利益は、上記の考え方に基づいて、計算を行いますが、加害者の保険会社から提示された賠償額計算書の内、逸失利益は、保険会社独自の見解に基づいて、低い金額の計算となっていることが散見されています。

そのため、加害者の保険会社から、賠償額の提示があった場合は、出来れば交通事故処理に精通した弁護士にご相談されることをお勧め致します。

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