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CRPS(RSD・カウザルギー)
CRPS(RSD・カウザルギー)とは、交通事故等の外傷をきっかけとして、発生する難治性の慢性的疼痛の症状をいいます。お怪我をすると、通常、疼痛(痛み)を伴いますが、CRPS(RSD・カウザルギー)は、後述の症状(関節拘縮、骨委縮、皮膚の変化〔皮膚温の変化、皮膚の萎縮〕)が現れたり、また、末梢神経の急性外傷を伴って、激しい疼痛の生じる点が特徴とされています。
元々は、神経損傷の無い慢性的疼痛をRSD(反射性交感神経ジストロフィー)、神経損傷の有る慢性的疼痛をカウザルギーとして理解されていたものが、1994年の国際疼痛学会(IASP)において、RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)をCRPStypeⅠ、カウザルギーをCRPStypeⅡと整理されるようになりました。
このCRPS(RSD・カウザルギー)複合性局所疼痛症候群は、診断基準がいまだ確定されておらず、その病因も不明で、根治的な治療法も確立していないとの事で、この後遺障害が残存した場合は非常に大変なご苦労をされる状況となります。
自賠責保険(労災保険)での後遺障害等級の判断におきましては、後述のとおり、RSD、カウザルギーと整理されていますが、治療に当たる医療の現場では、この二つをあまり区別することなくCRPSとして治療に当たられている印象です。
RSD(CRPStypeⅠ)とは
神経損傷を伴わない難治性の慢性的疼痛の症状をいいます。
このRSDは、橈骨遠位端骨折の際、合併する頻度が最も高いと報告されており、激しい疼痛以外に、関節拘縮、骨委縮、皮膚の変化〔皮膚温の変化、皮膚の萎縮〕、浮腫、発汗異常等を伴います。
カウザルギー(CRPStypeⅡ)とは
神経損傷を伴う難治性の慢性的疼痛の症状をいいます。
文献によりますと、アメリカ南北戦争の際に四肢遠位側末梢神経の部分損傷後に約10%の兵士が焼け付くような激しい痛みを訴えていることが確認され、末梢神経の部分損傷を伴っているか否かによって、RSDと区別されているようです。
もっとも、RSDと同様の皮膚の変化〔皮膚温の変化、皮膚の萎縮〕、浮腫、発汗異常等を伴う場合があります。
RSD・カウザルギーの後遺障害等級について
労災基準上、以下の後遺障害等級に区分されています。
- 「軽易な労務以外の労務に常に差し支える程度の疼痛がある」第7級
- 「通常の労務に服することが出来るが、疼痛により時には労務に従事することが出来なくなるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」第9級
- 「通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の疼痛がおこなるもの」第12級
RSD・カウザルギーの後遺障害等級判断基準について
RSDについて
- 関節拘縮
- 骨の萎縮
- 皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)
という慢性期の主要な3つのいずれの症状も健側と比較して明らかに認められる場合に、上記の後遺障害等級の区分に従って認定されることとなっています。
カウザルギーについて
疼痛の部位、性状、疼痛発作の頻度、疼痛の強度と持続時間、及び日内変動並びに疼痛の原因となる他覚的所見等により、疼痛の労働能力に及ぼす影響を判断して、上記の後遺障害等級の区分に従って認定されることとなっています。
RSD・カウザルギーの注意点について
後遺障害等級認定を受けるためには、RSD・カウザルギーとも、上記の各症状についての診断結果が必要となります。
RSD・カウザルギーの後遺障害診断を行っていただける主治医が、上記の労災基準をご理解されていれば問題ないのですが、細かな後遺障害等級認定基準までご理解されていないことが一般的なように思われます。
そのため、出来れば、事前に上記症状の診断と診断のために必要となる検査について検討や打合せしていただく必要があります。
また、①関節拘縮と②骨委縮に関して、診断を行っていただくために、整形外科部門での診察も必要となってくることも考えられますので、出来れば、後遺障害に精通した弁護士に一度ご相談されることをお勧めいたします。
当事務所での実績について
当事務所では、過去、CRPSの後遺障害が残存している方からご依頼を受け、必要な検査の検討や専門医との面談を経て、被害者請求手続きにおいて、実際に、適切な後遺障害等級認定を獲得し、解決に導いた実績があります。
また、骨折などのお怪我の後、酷い疼痛や痺れに悩んでおられる方には、疼痛・痺れの緩和のための診療科についてアドバイスをさせていただいたりしています。
もし、交通事故での受傷後、CRPS等の酷い疼痛・痺れ等の症状で悩まれている方やご不明点のある方は、当事務所まで、是非お気軽にお問い合わせいただければと思います。
文献
1)眞下節氏・柴田政彦氏ら著、複合性局所疼痛症候群CRPS