死亡事故の加害者は、以下の責任を負うこととなります。
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民事上の責任(民事責任)について
まず、死亡事故を発生させた加害者は、民法上の不法行為責任(民法709条、710条)にも続き、死亡した被害者の遺族に対して、損害賠償責任を負うこととなります。
また、事故を発生させた自動車の所有者は、自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任を負い、被害者の遺族に対して、運転者と連帯して賠償責任を負うこととなります(運転者が、自動車の所有者である場合は、民法上の不法行為責任とこの運行供用者責任の両方の責任を負うこととなります。)。
民法上の不法行為責任とは別で、運行供用者責任が法定されている趣旨は、運行供用者責任が、被害者保護の見地から、交通事故発生に関しての過失が推定される構造となっており、そのため、民法上の不法行為責任よりも、加害者(自動車の所有者)に対する損害賠償責任の追及が容易になる点を指摘できると思います。
交通事故での損害賠償請求訴訟の場合、一般的には、加害者、被害者の過失割合について争点となることが有っても、加害者の過失の内容や有無自体が問題となるケースは少ない印象ですが、これは運行供用者責任が規定されていることの効果と考えます。
(交通事故とは別の日常生活の事故の場合や医療過誤事件等の場合、そもそも、どのような行為が加害者の過失に該当するのかということが争点となることがあり、発生した損害の主張立証以前の過失責任の主張立証で相当な労力が必要となる印象です)
刑事上の責任(刑事責任)について
人を交通事故で死傷させた場合は、刑事上の責任として、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の一部を改正する法律」(自動車運転処罰法)の規定に従って、刑事罰を受けることとなります。
なお、物損事故の場合は、過失によるものであれば、刑事上の責任を問われません。
危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法、第2条)
危険運転によって、
- 人を負傷させた場合、1月以上15年以下の懲役刑
- 人を死傷させた場合1年以上の懲役刑
過失運転致死傷罪(同法5条)
1月以上7年以下の懲役刑若しくは禁固刑、又は100万円以下の罰金)
行政上の責任(行政責任)について
行政上の責任とは、交通事故を発生させ被害者を死傷させた事や道路交通法違反を根拠として、運転免許資格が取り消されたり、または一定期間効力が停止されたり、罰金とは別の性質として一定のお金(反則金)の納付を命じられたりする処分のことをいいます。
一般的には、交通事故により、人を死傷させた場合、その内容やその他道路交通法違反があったかによって、行政処分の内容(重さ)が異なってきます。
それぞれの責任の関係について
以上の
- 民事責任
- 刑事責任
- 行政責任
は、別個のものですので、例えば、示談が成立したので、①民事責任の問題は解決出来たとして、②刑事責任、または③行政責任を免れるものではありません。また、②刑事上の罰金を納付したから、その分、民事上の損害賠償義務が無くなるとか、減額されるという関係にもありません。
もっとも、刑事上の手続きにおいて、既に民事上の賠償が完了していて、被害者も加害者に対する刑事罰について寛大な処分を求めているというような事情がある場合は、このような事情が情状酌量され、刑事罰が軽減されたり、また、起訴不起訴の境界にあるような事案の場合は、不起訴処分となるケースも考えられます。