死亡事故の損害賠償とその知識について

はじめに

ご家族をある日突然に死亡事故で亡くされた場合の悲しみや大変さはとても言葉で言い表せるものでは無いと考えます。

出来れば、このような死亡事故に関する損害賠償請求に関するご説明をさせていただく必要が無いのが一番ですし、私もそう願っています。

しかしながら、現在の利便性の優れた社会の機能を確保するためには、人々の移動手段や物流の手段としての自動車等の交通機関がどうしても必要となり、私たちの生活が同じ社会の中にあり、現在の技術では人の失敗を完全に防止するこが出来ない以上、ある日突然、交通事故の被害に遭ってしまう危険性を完全に取り除くことは困難と言わざるを得ません。

もし、ご家族が交通事故の被害に遭われた場合には、その後の怪我の治療費の支払いや失われた収入の確保などが必要となり、ご家族が亡くなられた場合には、残された遺族の方のその後の生活の保障のためにも、適切な補償を求める必要性があります。

そのようなことから、死亡事故に関する損害賠償に関連するご説明を簡単にさせていただきますが、これらの記事が残された遺族の方の道しるべとして、ほんの少しでもお役に立てれば幸いに思います。

以下の記事では死亡事故において、確認しておきたい事項について、簡単なご説明をさせていただきます。

死亡事故の損害賠償について

死亡事故事案の場合、損害賠償実務上、以下の損害費目を請求することが可能です。

加害者の保険会社から賠償額の提示があった際には、以下の損害費目が網羅されていないことも考えられますので、確認が必要です。

各損害費目の詳細につきましては、「死亡事故の損害賠償費目について」のページでご説明させていただきます。

積極損害

  • 治療費
  • 入院費用
  • 付添費
    →被害者の方の入院に、ご家族が付き添った場合の費用です。
  • 入院雑費
    →入院をすることによって必要となる雑費に関する費用です。
  • 交通費(入院付添や見舞いのため、海外渡航費)
  • 宿泊費
  • 装具、器具など購入費
  • 葬儀関係費用(葬儀代、仏具購入費、遺体搬送料)
  • 後見関係費用
    →交通事故のお怪我により、後見人が必要となった場合に、それに関連しては発生した費用です。
  • 旅行のキャンセル代
    →事故によって、予定されていたご旅行などをキャンセルした場合に発生した旅行代金分の損害です。
  • ペットの飼育費
    →交通事故の発生によって、ペットをペットホテルなどに預けなくてはならなかった場合の費用です。
  • 親族の治療費
    →ご家族が事故の被害に遭い、それが精神的ショックとなり、同居のご家族が心療内科などで治療が必要となった場合の治療費があげられます。
  • 医師などへの謝礼
  • 刑事捜査、刑事裁判に関する費用
  • 物損(修理費、買替費用、代車費用、登録手続費用、積載物・着衣・携行品に関する損害)
  • 弁護士費用
  • 遅延損害金

消極損害

  • 休業損害金
    →事故のお怪我により、または、ご家族が事故のお怪我で入院し、その入院の手続きや付き添いのために、お仕事を休まなくてはならなかった場合の減収分の損害を休業損害金といいます。
  • 逸失利益
    →死亡のために、将来にわたりお仕事が出来なくなった場合の減収分に相当する損害を逸失利益と呼び、請求が可能です。

慰謝料

死亡事故のためにご本人が受けた精神的苦痛を慰藉するためのお金や、ご家族が死亡事故で亡くなられたことにより、同居のご家族などが受ける精神的苦痛を慰藉するためのお金のことを慰謝料と言います。

請求権者について

交通事故の場合、通常は、被害を受けたご本人が、請求権者となりますが、死亡事故の場合、ご本人は亡くなられています。

そのため、ご本人が、加害者に対して、有していた損害賠償請求権を、相続人の方が相続し、ご本人さんに代わって、請求をしていくのが基本と考えていただいて良いかと思います。

また、死亡事故や重度の後遺障害が残存した場合、被害を受けたご本人以外の同居のご家族など、被害者の方と密接な関係にご家族は、そのご家族自身の固有の慰謝料を請求できるときがあります。

そのため、死亡事故において、損害賠償請求が可能な方(請求権者)は、①被害者の方の「相続人、及び②被害者の方と密接な関係にあるご家族と理解してもらえれば問題ないです。

詳細な内容につきましては、「死亡事故の損害賠償請求をできる方について」のページでご説明させていただきます。

注意点について

相手方の保険会社の提示内容について

死亡事故が発生した後に、相手方(加害者)の保険会社から、賠償額(賠償金)の提示があると思われます。

しかしながら、前述のとおり、ご請求が可能な損害費目の全てが盛り込まれていない場合や、休業損害金や逸失利益の計算方法が被害者のご家族にとって不利な条件設定となっている場合が散見されています。

このような理由から、相手方の保険会社から、賠償額の提示を受けた場合、その書類を交通事故の処理に慣れた弁護士に一度は確認してもらった方が良いです。

被害者側がご利用可能な保険について

交通事故の被害に遭われた場合に、被害者の方がご契約されている自動車保険などでご利用可能な保険が設定されている場合があります。

被害者の方ご自身のご契約されている自動車保険や、被害者の方のご家族のご契約されている自動車保険のそれぞれで、例えば、人身傷害補償特約(保険)や無保険車傷害補償特約(保険)、弁護士費用補償特約などの保険がご利用可能な場合がありますので、ご契約先の自動車保険会社か交通事故の処理に慣れた弁護士にご相談いただければと思います。

相続に関連しての注意点

相続人の把握について

前述のとおり、死亡事故において、賠償金を請求出来る方は、通常、交通事故の被害に遭われた方の相続人となります。

もっとも、諸事情によって、全ての相続人をご家族が把握できていない、または、現在どこで生活しているか、また、連絡方法が分からない相続人がいらっしゃるということがみられます。

その場合、全ての相続人を把握した上で、連絡を取れる状態にしておかなければ、どの範囲で賠償金を請求できるのかが不明確となり、相手方との示談交渉を進めることが出来ないという事態も考えられます。

このような時、一般的には、被害者の方の戸籍謄本をさかのぼり、全ての相続人を確定していきますが、現在の法制度上、一般の方がご自身以外の方の戸籍謄本を直接入手することは、プライバシー上の問題から認められないと思われますので、弁護士等専門家にご相談いただく必要があります。

なお、弁護士が戸籍謄本を入手する場合は、依頼者様から示談交渉等、具体的な事件処理のご依頼をいただく必要があり、単に戸籍謄本の入手などを目的として事務処理をご依頼頂くことは出来ない決まりとなっています。

そのため、最終的な示談交渉や訴訟での解決を視野に、交通事故の処理に慣れた弁護士にご依頼をいただく方が無難だと思います。

遺産分割の可否

交通事故での加害者に対する損害賠償請求権は、可分な債権ですので、法律上、遺産分割を経ることなく、相続分に応じて各相続人が取得すると考えられています。

そのため、各相続人の皆様が集まり、被害者の方から相続した損害賠償請求権をどのように分割するか取り決めをすることなく、各相続人のそれぞれで請求していくことは可能です。

もっとも、そのように進めると、相続人のそれぞれで、損害額の計算や相手方の保険会社から提示内容のチェックをしなければならず非効率であること、また、他の遺産の分割方法との調整を図る観点から、一方の相続人は、遺産の不動産を取得し、他方の相続人は、損害賠償請求権を取得するという内容の遺産分割を行うことも考えられます。

そのため、示談交渉段階では、遺産分割自体を完了させておく必要までは有りませんが、相続人の皆様で一度は示談交渉等の進め方について話し合っていただき、具体的な分割方法は後日決定していくこととして、取りあえず、相続人全員で示談交渉を進めて行くことや、皆様で同じ弁護士にご依頼を検討されるなどしていただければ、効率よく進めて行くことが可能と思われます。

なお、死亡事故の場合、損害賠償請求以外に、遺産分割の問題も出てきますので、一度は弁護士にご相談をされることをお勧め致します。

相続税の納付義務、準確定申告について

被害者の方がお亡くなりになられましたら、その時、相続が開始されることとなります。そして、税務上、①相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に相続税の申告と納付、②被害者の方が、確定申告をされていましたら、相続の開始の翌日から4カ月以内、準確定申告を行い、所得税を納付する必要があります。

なお、交通事故等を理由として、受領した損害賠償金自体は、原則的に非課税となっており、相続税、所得税等の納付義務は発生しない取り扱いとなっています。

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